本日、情報収集がてらインターネットで製薬関連のニュースを調べていると、「この10年で最も失敗だったM&A案件」という名前のトピックスが目に入った。本日はこれをまとめてシェアしたい。
この記事から得られる知識
この記事から「この2010年代に行われた製薬業界のM&Aで最も評価されていないものは、どのM&Aだったのか」という情報が手に入ります。
元記事は、こちらです。
Bayer & Monsanto
企業名:バイエル薬品 / モンサント
買収金額: $63 billion(約6.8兆円) 買収実施日:2016年9月14日
バイエル薬品にとってアメリカでの強固な農薬ビジネスを持っていたモンサントは、魅力的な企業であった。しかし、買収後肥料分野の反トラストによる一部事業の強制売却を命じられた。また、モンサントの農薬から発がん物質は検出され訴訟に発展。この買収によるバイエル薬品の収益に影響は全くなく逆に ($39.5 billion) の借金を得るだけになってしまった。その結果バイエル薬品は12000人のリストラを発表。加えて、コンシューマ部門やアニマル事業を売却しなければならない事態に陥った。
Shire & Baxalta
企業:シャイアー/バクスアルタ
買収金額: $32 billion(約3.5兆円)買収実施日: 2016年1月11日
バクスアルタ買収により血友病事業を強固なものにしようと試みたが、その薬剤はマーケットを一変させるほどの力はなかった。そして、最終的にはご存知の通り武田薬品に買収されるという末路になった。
Johnson & Johnson & Actelion
企業名:ジョンソン&ジョンソン/アクテリオン
買収金額: $30 billion(3.2兆円) 買収実施日: 2017年6月16日
本アクテリオン買収に関しては、サノフィとの熾烈な買収合戦を繰り広げた。本買収で3つのPAH(肺高血圧)の治療薬Tracleer、Opsumit と Uptraviを手に入れたが、Tracleerの売上は思ったほど伸びず、OpsumitはPhase3で失敗するなど、J&Jはこの買収からの投資資金回収に難渋している。
Bayer & Merck consumer health
企業名:バイエル/メルク(コンシューマ事業)
買収金額: $14.2 billion(約1.5兆円) 買収実施日:2014年5月6日
本買収の目的として当時のバイエルの経営陣はOTC部門を世界最大のものにしたかった。買収後のコンシューマ事業は波に乗れず、高値掴みと株主から経営陣は揶揄された。実際に、その買収金額は、事業の売上全体の6倍を超える金額で回収は当然困難を極めた。この後、モンサントの買収によりいくつかのブランドは売却された。
Gilead Sciences & Kite
企業名:ギリアドサイエンシズ(Gilead)/カイト(Kite)
買収金額: $11.9 billion(約1.3兆円) 買収実施日:2017年8月28日
カイト社の唯一の承認済み製品であるCARーT療法の「イエスカルタ」は、当初20億ドルの売上を上げると思われていたが、現状2019年の売上は4億ドルであり投資回収に困難を極めている。
ギリアド社は、このCell Therapyは確実に今後のギリアドの柱になっていくと強気の姿勢のようだが、カイト社を購入するタイミングが早すぎたのでは?という懸念の声が聞こえる。
このカイト社の買収が本当に早すぎたのか?ちょうど良いタイミングだったのか?はたまた、そもそもこの買収自体が間違えだったのかは今後わかるであろう。
Sanofi & Bioverativ
企業名:サノフィ(Sanofi)/バイオベラティブ(Bioverativ)
買収金額: $11.6 billion(約1.2兆円) 買収発表日:2018年1月22日
サノフィがRare Disease事業に注力しようと決めた際に魅力的であったのが血友病の有力な候補品を持っていたバイオベラティブ社だった。しかしながらこの血友病事業はロシュ社の有望な薬剤がライバルとして現れたため、失墜しそうな状況である。
他にも
この他にもAmgenとOnyx、AbbVieとStemcentrx、MerckとCubist、AlexionとSynageva、AllerganとKytheraなどの買収劇が失敗だったのではないか?と思われているようです。
まとめ
このように昨今製薬会社間もしくは製薬会社がバイオベンチャーを買収するM&Aは多発しておりますが、全てがすべてうまくいっていると言えるものではないのが現状です。ここに述べた買収も、今後大きなシナジーを発揮し大化けする可能性もあります。
ただ、買収を提案、承認、実行に移しそれを自らの経歴に加え、一番困難を極める買収後の統合案件を行わずに他社へ移っていく経営者も多いようです。前任者が、エリアの市場を荒らして退社後、そのケツふきをするような感じでしょう。来年も大きな買収の発表がある事と思います!注目しましょう。