旭化成ファーマが買収した米国Veloxis(ベロキシス)とは?
買収の目的
体内で必要最小限の量を患部に届けるドラッグデリバリー技術(MeltDose Technology)を獲得できる。
そのドラックデリバリー技術を応用したタクロリムス製品であるベロキシスの昨年売上高は42億円を売り上げており、今後もマーケットシェアを獲得し続ける予定。そこにアジアでの販売網を持つ旭化成の力を加え更に販売を加速させることが狙い。
買収に至った背景
―海外、特にアメリカで医薬品事業を展開するための事業基盤の獲得
―アンメットメディカルニーズがある移植の分野で強みを持つVeloxisとのシナジーを期待
―Veloxis 社が販売している製品は、旭化成が既に知見を有する腎移植手術患者向けの免疫抑制剤であり、独自のドラッグデリバリー技術を活用することで、アンメットニーズを満たすとともに、他社製品との差別化が図れる。
―Veloxisの経営陣をはじめ、高度医療向けに特化した製薬企業を複数経営してきた経歴を持つ人財の獲得。
Veloxis(ベロキシス)社について
デンマークの企業 Veloxis
Veloxis(以前は、LifeCycle Pharma)社は、移植患者さんへの貢献にコミットするスペシャリティファーマです。経営の母体は、デンマークのVeloxis Pharmaceuticals A/S社であり、アメリカの本社はアメリカのノースカロナイナ州カーリーにあります。VeloxisはNASDAQに上場しており、証券コードは、[OMX: VELO]です。
独自のドラックデリバリーシステム[MeltDose®]
Veloxis社は、独自のドラックデリバリーシステム[MeltDose®]をベースに創薬したENVARSUS XR(タクロリムスの長期徐放製剤:プログラフの競合品)が主要製品です。この独自のドラックデリバリーシステムである。[MeltDose®]は、吸収とバイオアベイラビリティをより効率化した経口製剤です。このVeloxis社は、このENVARSUS XR をアメリカで自社販売しており、販売ライセンス契約にて世界各国へ販売しております。

経営状況
このVeloxis社のP/Lですが、Revenue=ENVARSUS XRの売上という形で、2018年は約42億円程度の売上収益で、営業収益は約7億円強の赤字となります。研究開発費は、ほとんど投じていないも同然ですので、今回の買収はすでに確立されているこのドラックデリバリーとENVARSUS XR並びにアメリカでの販売網に約1400億円を投じたという事になります。これから、数字では計算できない「シナジー」をどう発揮させてアメリカ市場への資源の投入を図っていくのか楽しみです。
ENVARSUS XRについて

アメリカのタクロリムス市場
アメリカのタクロリムス市場の約90%は後発品のようです。中でもアステラスの主要製品であったプログラフ、アスタグラフは一時期2000億円強を売り上げたメガヒット製品です。うまく後発品やプログラフと差別化する事で旭化成ファーマが予測するピーク時700〜800億円も夢ではないと思われます。

まとめ:旭化成ファーマの期待
今回の買収で獲得する「Envarsus XR」は、独自のドラッグデリバリー技術の活用で、最高血中濃度の上昇を抑え、有効成分の濃度を長期間保つことを可能にした薬剤。1日1回の服用ですみ、副作用の軽減も期待できるという。同剤の特許期間は2028年までで、ピーク時売上高700~800億円を見込む。旭化成ファーマの強みである免疫・神経領域を強化。20人の営業人員で、全米で約200ある高度医療施設市場・専門医にフォーカスした情報提供活動などを実施することで、高い効率性と収益性を有するプラットフォームを構築したい考え。